「頭いてぇ~」

「おはよ。水いる?」

「…うん…」


私が声をかけると、返事はしながらも、きょとんとした顔をしてあたりを見回していた。


「え…俺、昨日…」

「覚えてないの?」


一次会で酔っぱらっていたらしい蒼は、ここに来るまでの記憶はあるみたいだけど、所々抜け落ちているようだった。


やっぱり…。

そうとしか言えなかった。

でも、蒼が覚えていなくてホッとした。

酔って、口から出任せを言ったのか…。

本心がポロリしたのかはわからないけど…。

私の中で押さえておいたほうがいい気がする。


「なんかした?!」

「ううん!酔ってすぐ寝ちゃったんだよ!」


そう言うことにしよう…。

なにもなかった…。

キスなんてされてない。

蒼の口から『好き』なんて聞いてない。


「ホントに?」

「ホントに!今度は蒼が私を抱きしめて離してくれなかったけどね。」


眠ってしまった蒼の下から這い出すのも一苦労だったのだけど…。

私はソファーで眠る蒼に布団をかけて、部屋に戻った。


「は?!マジ?」

「マジマジ!」


蒼の唇の感触が頭から離れてくれなくて。

蒼の真剣な眼差しが目をつぶったまぶたに写される気がして。

蒼の声が…ずっと耳から離れなくて…。


「…他には?」


他…?