『ごめんな!』と何度も謝りながら手を差し伸べてくれる。

私は、自分の力でなかなか立ち上がれずにいる。

蒼は私の手を引き力強く引き寄せる。


「わっ」


即座に腰に手を回す蒼。


「悪いな…怖かったんだろ?」


蒼は心配そうに顔をのぞき込みながら言う。

私は黙ったまま頷いた。


「…でも、平気!大丈夫だから!」


精一杯、笑顔を作り、元気に答えた。


「無理しないの!」


頭を撫でた蒼。

確かに、笑顔は多分ひきつっていて、膝が未だに震えているのに、『大丈夫』と言われても、ホントに説得力がない。


「ったく、勝手に一人で帰るから…」


そう言われればそうなんだけど。

でも、私にだって言い分はある。


「…だって……」

「なぁに?」


イジケる私に悪戯っ子のような微笑みが向けられる。


「……蒼、秋野さんと楽しそうだったから…邪魔しちゃ悪いなって…」

「……」

「ほら、カラオケは?誘われてたじゃん!」


なんで黙ってるの?

沈黙が二人を包む。


「…それ、本気?」

「え?」


本気って…悪いなって思ったこと?


「それで、イジケて何も言わずに帰ったの?」


…その通り……

イジケてってのがなんか気にくわないけど…