「な、声かけてくれればよかったのに!」

「遥になんか言われた?」

「へ?」


いきなり話題をすり替えられて、

頭がついていかなかった私は、間の抜けた声を発した。


「美月がトイレ行った瞬間、アイツも席を立ったから…もしかしてって思って。」


いつも気にかけてくれてるんだ。


「ありがとう、でもたいしたことじゃないから。」

「じゃぁ、なんで、こんなとこで根暗みたいな事してんの?」


う…。

なんでと言われると。

しかも根暗って…。


「……げ現実逃避…?」

「…つまりは、現実逃避したくなるような事を遥に言われたと…。」


うぅぅぅ…。

茜は、痛いところをズイズイとつっこんでくる。

秋野さんに言われた事は、直接は関係ないけど…。

でも、あの人は確実に私の心に重たい物を残していく。


「ん…なんかまとまんないや…混乱中。」


はははっ!っと苦笑いを浮かべながら、

なんとか話を逸らそうと試みる。


「いいよ!まとまらなくても!ってか、いつものことでしょ?」


茜さん?

それはフォローなんでしょうか。

それとも貶されてるんでしょうか…。


「いっぺんに考えるから、訳がわからなくなるんでしょ!まずは、遥に何を言われたの?」


やっぱり、茜にはかなわなくて、順を追って秋野さんに言われた事を説明する。


「はは!相原の思惑に反して、遥も諦めちゃいないね!」

「秋野さんに諦めさせるには、茜みたいな美人と付き合わないとダメだと思う…」


私じゃ、秋野さんにとっては『こんな子と付き合うなら、私の方が似合う』って簡単に思えちゃうもん。


「はは!私美人?ありがと~!」


なんて言いながら、私に見せる照れ笑いが何とも可愛い。