丁度期末テスト期間中で、部活が休みの静まった体育館。

私たち3人の足音だけが響いていた。


「優斗?!何?!どうしたの?」

「…ごめん。俺、頭悪いから…こんなふうにしかできなかった。」




「信じてた。…話しもできなかったけど、私は工藤が好きだったし…いつか話ができるって、今まで通りになれるって思ってた。」

「……」


蒼が背中をさする手を止める。


「…言わなくてもいいぞ。」


なんとなく…私が話す前に、話しの内容を悟った蒼が、強く私を抱きしめる。

でも、ここで止めたら、尚更誤解される。

蒼が想像してる結果とは違う。

でも、怖かったのは確かだから…。

そう思った私は、心を無にして話を始める。

感情を込めると…どうなるか…自分でもわからない。


「体育倉庫…鍵が壊れてたの。」

「うん。」


耳元で、蒼の優しい声が聞こえる。

蒼の吐息が首にかかる。

大丈夫…信頼できる人が…私にはいるから…。


「その鍵を直しに来た先生が、私たちを発見した。」

「…じゃぁ……」

「…うん。未遂だった。」





腕を引いたまま優斗がどこに向かってるかわかった。

嫌な予感がした。

『もう、戻れない』

そう言った優斗は、悲しそうな目をしていた。

何かをふっ切ったように、振り向かずに力強く腕を掴む優斗が向かったのは体育倉庫。


「優斗!?ねぇ!」


私の呼びかけにも反応を示さない。

どうしたの?

何が起こってるの?


「拓真!」


振り返って、後ろからついてくる拓真に呼びかけてみるものの、拓真も反応してくれない。

優斗に腕を引かれるまま体育倉庫に踏み入る。

カビ臭い用具室。

拓真が、後から入り、ドアを閉めた。


「…何?ねぇ、何か言ってよ。」

「…ごめん、美月。」