椿に怒られた後、教室に戻った。


「あの子、可愛かったよね~!!」

「うんうん あたし、狙っちゃおうかな~。」


なんていう会話が聞こえてきていた。


「誰のこと言ってるんだろ?」


そう呟くと、ハァ とため息をついて椿が説明してくれた。


「あんたは寝てて知らないだろうけど、渡部 蒼空っていう新入生のこと言ってるのよ?」

「そんな格好よかったの?」

「まぁね、どっちかというと 可愛いの方がしっくりくる感じの子だったわよ。」

「ふへぇ。」


あたしの興味なさそうな返事に、椿は眉をしかめる。


「少しは、男子に興味もちなさいよ?」

「だってー、興味ないんだもん!」

「全くもう。ま、そこがあんたの可愛いとこだけど。」

「ん、なんか言ったー?」

「言ってないわよ。」

「ふーん…。」


このとき、あたしはまだ知らなかった。


もうすぐ、一生分の恋をする事になるなんて────。