(…付き合って、ない、よな)
 
しかし、どこから付き合っていて、どこまでが付き合っていないのか。…難しいところだ。

「黎? 何ボーッとしてんの?」

「はへっ?」
 
急に乃亜に顔を覗き込まれ、黎は間抜けな声を出す。

「何でもないよー、あははー」
 
引きつった笑いを見せると、乃亜は怪訝そうな顔をしたが、「ふうん」と呟いてまた歩き出した。


 
そんな乃亜の横顔を見て、黎は決心を固めた。

(告白しよう!)
 
何度そう思ったか分からないが、今までは勇気が足りなくて言えなかった。しかし、今日こそは!
 
この中途半端な関係から一歩前進したい。

「乃亜っ」

「んー?」
 
乃亜が振り返る。

「あ、あのさ…」
 
乃亜は大きな瞳で黎を見つめ、言葉を待つ。

「あー……」
 
黎は口をパクパクさせるが、喉の奥が詰まって、中々言葉が出てこない。

(言え! 黎!)
 
心の中で自分を叱咤する。

(今だ、言うんだっ!)
 
ゴクン、と唾を飲み込み、真剣な眼差しを乃亜に向けた。

「俺っ、乃亜のことっ…」
 
言葉を告げようとした時。