「俺達……付き合ってないよ」

「はー? 何言ってんの、そんなこと誰も信じないって。皆分かってるから、今更隠さなくていいから」

「いや、ホントだって…」

付き合っているというのは事実に反するので、黎は否定する。
 
丁度そこへ、乃亜が仕事を終えて教室に戻ってきた。

その姿を見つけた途端、黎の表情はパッと明るくなる。

「あ、黎ー」
 
乃亜の方もすぐに黎を見つけ、やってくる。

「ちゃんと一人で来れた? 怪我とかしなかった?」
 
大きな瞳を更に見開いて、黎に話しかけてくる。

「大丈夫だよ。乃亜は心配性だなあ」
 
黎は乃亜に会えたうれしさを隠すことが出来ず、満面の笑みで答えた。

「だって心配だったんだもん。黎、一人で学校来たことないし、怪我したら大変だし…」
 
輸血を必要とする大怪我の出来ない黎を、本気で、真剣に心配する乃亜。しかし、黎はにこにこ笑顔を止められない。

「…何笑ってんの?」
 
話を聞いていない風な黎に、少し怒りを感じる乃亜。