一人寂しく登校した黎は、暗い表情のまま昇降口で靴を履き替えた。

「おはようー、あれ、今日一人か?」
 
後ろから同じクラスの男子生徒に声をかけられる。

「うん、乃亜は週番だから」

「あーそうなんだ」
 
そこでその生徒との会話は終わる。
 
教室に入ると、乃亜の友人が近づいてきた。

「あー櫻井、乃亜は?」

「週番だから先に来てるはずだけど…」

「あーそっか、どうもー」
 
黎に軽く手を振り、乃亜の友人は去っていく。

それを見送り、自分の席につくと、

「今日は高倉さんと一緒じゃないの?」
 
と、後ろの席の男子生徒に声をかけられた。

「今日は週番だから…」
 
今朝三度目の同じ答えを返す。

「ああ、そっか」
 
その男子生徒も、他の者達同様、同じ反応を示した。

「なんか、お前ら一緒にいないと変な感じするよな」

「えっ? そう?」

「だって四六時中べったりくっついてんじゃん。いくら付き合ってるからって、そこまで見せ付けなくてもいいよなって感じ?」

「えっ?」
 
意外な言葉に、黎は少し驚いた。