「蓮也さん、送ってくれてありがとうございます!」
ゲーセンからの帰り、家の前まで送ってもらった。
「ああ」
運転席の窓を開けて、わたしを見上げる蓮也さん。はあ…かっこいいよう。
「はい」
凛ちゃんが、後部座席に座ってたウサギのぬいぐるみを渡してくれた。UFOキャッチャーで、凛ちゃんと一緒にとった子だ。
「ありがとう、凛ちゃん」
「…うん」
ふふ、朝よりちょっとだけ仲よくなれた、かな。
次の瞬間、凛ちゃんがそっとわたしにささやいた。
『お兄様…本命は絶対作らないんだ。だからいろいろあちこちに女の人いるけど…負けないでね』
「えっ…」
「じゃあ、またな、陽菜」
向こうの座席から、蓮也さんが声をかける。
「えっ、あ、はいっ! また…」
また、会えるんだ…! それだけでも、うれしい。
エンジン音とともに走りだす車。遠ざかる姿がなんだか切なくて、角を曲がるまでずっと、手をふっていた。
そして知らないうちに、手に持っていたウサギさんをギュウッとにぎりしめていた。