「ほらっ」
見上げた顔に差しだされたのは、ストロベリーのジェラート。
赤いつぶつぶが、ぽつりぽつりとうかんでる。
「あっ…ありがとうございます」
両手でうけとって、そっとスプーンですくう。蓮也さんはとなりに座ると、自分のチョコレートアイスをぱくぱく食べはじめた。ふふっ、なんかかわいい。
「…はぁ…」
「どうした」
「え?! あ、い、いえ! なんでも…えへっ」
あわてて首を横にふる。蓮也さんに気づかれないように、今度は小さくため息をつく。
「ちょっと…凛ちゃんのたまってたエネルギーに圧倒されたというか…このお店自体の雰囲気にもやられちゃったというか…」
「ははっ…、ゲーセンってさあ、見てるだけでもけっこう疲れるだろ?」
蓮也さんが、楽しそうに笑う。
「ゲーセンって、都会の若者たちの“心の叫び”が共鳴した、ギラギラしたカオスだからな。まあでも、俺もこういうのは得意じゃない。けど、嫌いじゃない。こういう抑圧されたエネルギーをかかえてない、ロックなんてできないし。声の動きだって、ある種の“解放感”にのせてやってる時もあるからな」
「心の叫び…かぁ」
「…」
「…」
「…悪い」
「え…?」
「せっかくのデートが、デートじゃなくなったな。凛の相手ばっかりさせてるし…サンキュ」
ふいに笑った顔が、困ってるような、さびしそうな、顔だった。
そんな顔しないで…蓮也さん。
たしかに、ふたりきりのデートじゃなくなったけど…残念だけど、でもでも! あなたと一緒にいられるのは…やっぱりうれしいんだよ。