「どうぞ」
「あ…どうも、あ、はい、ありがとうございます」
お風呂上がりの蓮也さんが、わたしの前にアイスティーのグラスをおく。
あの…そんなに見つめられると…緊張するんですけど。広すぎるリビングも、落ちつかないなぁ。
そわそわしてる自分を落ちつかせようと、アイスティーを一口飲みこむ。
「凛ちゃんって、いいましたよね。まだ中学生なんですね。蓮也さんが25歳ですから…十個年上ですか」
「ああ、あれ、事務所のプロフィール、嘘だから。今、俺28」
「Σえ!? あ、そうなんですね、あはは…でも若く見えます、23歳くらい、かな、です、はい…って、ええと…いつもお風呂、いっしょなんですか(うぅ、いったいわたし、何きいてんだろ)?」
「ん…兄貴のむだ毛処理するのが、世の妹のつとめだって、あいつ言ってたけど」
(…ロリコンじゃないけど、シスコンだ…)
「俺はそのかわり、妹の髪をブラッシングするってのが、義務らしいな」
(あっちはブラコンか…ま、見てればわかるけど…しかも相当な。兄の彼女をだまして連れ込んで、自分たちの仲を見せつけちゃうくらいの…って、わたし、蓮也さんの彼女?! きゃーっ!)
「あはっ☆ 仲のいいご兄妹なんですね!」
そう言ってまた、アイスティーを口にする。
彼が用意してくれたシュガーもミルクも、入れずにわたしは飲んだ。
わたしの中で、精いっぱい、背伸びをしたかった。
少しでもあなたに、大人に近づきたいから。