『おあやや、母親におあやまりなさい』
新しい、わたしの日常がはじまる。
優一くんといろんな演技をして音声のやり取りをするって約束したけど、それと平行して基礎訓練もやるってことになった。
「たしかに、声の演技のやり取りも大事だよ、自分の声が人にどのように聞こえるのか、そのためはまず本人が自分の声の性質を良く知らなきゃならないからね。自分で録音した声を聞いて、自覚しておかないと。
でも、まずなによりも腹式呼吸をマスターすること。たくさん息を吸って声を出すことをおぼえないと。桜木さん、体力だけは自身があるよね? 次にノドの解放。ノドに負担をかけないような発声をしないと。声優はノドが大事な商売道具なんだから、なによりノドのケアをしっかりしないと。そして滑舌の練習も必要だ。きちんと鏡の前で、顔面の筋肉を意識して口を正しく動かすことを知るんだ」
「先生! 一つ言っていいですか!」
「なんですか、桜木くん。まさかもうやることが多すぎていやになったとか? そんなつもりじゃなかったとか?」
「いえ! やることがいっぱいあって、すっごくゾクゾクしてきました!」
「きみ、マゾ?」
うう~、優一くん、本気だ。でも、それがなによりうれしい。わたしが声優になりたい! なんていって「そんなの、なれるわけないだろ~」なんてこと、一言もいわない…私の未来を、真剣に見つめてくれた。
その気持ちが、すごくすごくうれしい。
がんばる!
すごく大変そうだけど、それよりも、先に待ついろんなことがキラキラ光り輝いてるみたいで、うれしい!