新生ロスチルの船出は小さなライブハウスだった。
しかし開場前の入り口周辺にはけっこうな人だかりができている。
「…なんかメタル色っていうか…ファンの色が全体的に黒っぽくなったというか…ずいぶんイメージが変わりましたね、ロスチル」
ぼくがそう言うと、となりで一服していた塔子さんがちょっと間をおいてこたえる。
「…新メンバーにベースと、さらにもう一人ギターまで入れて、曲調も重くて…込められたものも大きくなった感じだよね…蓮也の心、そのまんまだね」
塔子さんの言葉を聞いて、ぼくはふと空を見上げる。
今にもふり出しそうな、曇り空。
あの日と同じような。
「…あれからまだ一年…」
誰ともなくぼくはそうつぶやいた。