どーん




どーん




全身の骨がふるえる。




大きな太鼓をたたきながら、たくさんの人がかけ声をかける。




「おぉーっ、いけーっ! やれーっ! どーん! どーん!」




とわたしも負けずに声を出す。




「ははっ、なんだそのかけ声」




「陽菜ってこども~」




「え~、子供じゃないよ~。だってこんなに大人っぽい浴衣きてるも~ん。ねぇねぇ蓮也さん、わたし色っぽいでしょ?」




今日のために買った浴衣。白地に、濃さの違うピンク色の桜の花がいっぱい舞ってる。夏だけど大好きな桜もようは、はずせないよね! 髪は上にあげて、大きな紅い牡丹のお花をつけた。




じつはグロスもちょっとだけ多め。ぷるぷるのくちびるにした。




べつになにか期待してるわけじゃないけど…少しでも大人っぽく見せたかったの。あなたのとなりに、並べるように…。




「さっきも言っただろ、似合うって。いつもと違って、たしかに色っぽいぞ」




「ぶー、いつもと違ってはよけいですー」




「そうだそうだ、お兄様にはもっと大人の女性がお似合いだー」




そういって凛ちゃんが冷やかす。うー、たしかに、これだったら凛ちゃんの方がずっと美人で、大人に見えるよ。




赤い金魚が泳いでる水色の浴衣。ゆるく巻いた黒髪に、わたしと色違いの白の牡丹をつけてあげた。凛ちゃんは浴衣を持ってなかったから、わたしのおさがりをあげたんだけど…すごく似合ってる!




で…目の前の蓮也さんは…黒の浴衣! たもとに銀色のチョウチョがひらって飛んでるの。はぁ~…似合う~、どうしようどうしよう! 顔がにやにやしちゃう! もう…この色香がたまらない…360度、ぜーんぶすてきですっ!!