「映画なんて久しぶり! 楽しみです♪」




となりの席の蓮也さんに話しかけたら、ふふ、って笑われちゃった。えへへ。




しかもしかも! 蓮也さんが出てるから、蓮也さんの声を大スクリーンで聞けるんだよね!! あ~、楽しみっ!




「ちょっと、うるさい。静かにしてよ、はじまっちゃうでしょ」




「うっ、ご、ごめんなさ…」




となりのとなり(つまり蓮也さんをはさんだ向こう側)に座ってる凛ちゃんに怒られた。そんなわたしを見て、蓮也さんがまた笑う。む、むぅー。




今日は蓮也さんと映画デート! また蓮也さんに会えるんだ! 今度こそふたりきり!? 前も楽しかったけど、やっぱり蓮也さんとふたりきりで、あまぁ~いデートしたいもんね!…なんて、ちょっとスキップしちゃうくらい楽しみにしてたのに…!




「お兄様が演じたレインって、お兄様に似てますよね」




「そうか?」




「でもやっぱり、お兄様のほうがステキですよ!」




暗闇でこっそり、二人で話してる…。くぅ~~っ! なんで…? なんで今日も凛ちゃんがいるの?! わたしと蓮也さんの、あまぁ~いデートが…。




「…ん」




「え?」




ずい、と目の前にあらわれたキャラメル味のポップコーン。これは、凛ちゃんが上映前に蓮也さんに買ってもらったやつだ。




「ちょっとなら食べてもいいけど」




上映のじゃまにならないように、ぽそぽそっとしゃべる凛ちゃん。




「あ、ありがとう!」




「べつに…静かに食べなさいよ」




「ふふっ、うん」




キャラメル味のポップコーンは、ほんのり甘くて、やさしい味がした。