「あの…
わたし…
優一くんのことが…
えと…
好きになっても…
いいですか…?」
「うわぁ、なんだよ、いきなり! 耳元でへんな声だすなよ!」
「変な声とは何よー。何この子? 好きになってもいいですか? って、告白しといてまだ自分の想いを伝えてないじゃん。ここはズバッと“好きです! つきあってください!”って言わないと!」
「桜木さんみたいなそういう押しの強い子ばっかりだから、男が怖がるんだよ。いいんだよ、男はこういうおとなしい子が好きなんだからさぁ」
「ふぅ〜ん…。あ、もしかして鷹井くんもこういうかよわい子がタイプなんだ〜?」
「うるさいなあ、ゲームのジャマ」
「あれ? 音消してやってるから、さびしいかと思ってしゃべってあげたのにぃ〜」
「うるさいし、学校だし、声に興味ないし。第一さびしくもないし」
「え〜!? そんなのつまんな〜い。声で聞いたほうが絶対こころも伝わるよねー」
「……声に出すだけで心が全部伝われば、だれも苦労しないよ…」
最後の優一くんのつぶやきが、今もわたしの耳に残る
出会ったばかりのころの、何でもないおしゃべりが春の空気をふるわせて、いまもわたしの中にそよぐ
桜舞うこの季節
いつも思い出す
わたしたちの、声