「アンナ! お前は顔洗って、歯磨いてこい! 服は……そのままでいいだろ」

寝間着のジャージ姿のアンナは、バタバタと洗面所に走っていく。

俺とコウタも同じようなジャージ姿だけど、着替えている暇はない。

壁にかけてあったスーツを二着、スーパーの袋に無理矢理突っ込んだ。

式場のトイレで着替えられるように。


「タクシー、五分で着くって!」

携帯片手にそう叫ぶコウタ。

「わかった。じゃあコウタも洗面所に行け! あっ、ワックス持ってこいよ!」

アンナと同じくボサボサな髪の毛。

鏡は見ていないけれど、俺の髪の毛も同じ状態になっているだろう。