赤ん坊が親を見つめ続けられるのは、赤ん坊にとって、それが世界そのものだからだ。
 そう考えると、僕は今、彼女の世界に取り込まれていた。
 
 NOW DOWNLOADINGって感じ。

 
 「…んだよ、どう言ったら伝わるん――」


 「ありがとう」
 彼女はニコリと笑った。
 切れ長の目が、そのときだけは女性らしい丸みを見せた。
 「なんか必死だね、オマエ」


 ――!
 確かに…。 どうして…!? 
 「そうじゃない。アンタが俺を――」


 「そうじゃなくないよ」
 「15で死んでいたら、今日はなかった。オマエみたいな昔の自分と出会う事もなかった」
 
 「尾崎みたい。15の夜、死ななくて良かった。生きる方選んでて、ちょっとうれしい」

 彼女はもう、60秒近く、僕の目を見つめ続けた。
 瞬きもせず。
 だからだろう、少し目が赤くなって涙が光っている。