「いや…」
 
 まただ。
 また僕は、『いや』としか言ってやれないのか――!?


 ――……嫌だ!

 僕の喉が油を欲していた。
 けど、油なんてない。錆がどうした? 
 摩擦で擦り切れてもかまわない。今、言うべき言葉がある。
 
 「いや…“俺も同じ”だよ」
 
 僕も同じ。
 僕も舞台袖で考えていた。僕は、僕を演じているのか?
 ならば、僕がいなくなっても、僕という役を継ぐ代役がどこかにいるのか? 
 僕の代わりはいるのか?

 自分のことは分からない。
 ただ、一つ言えるのは――
 キミは一人だ。
 キミの“代役”はいない。キミの代わりはいない。
 
 キミは一人だ。
 故に―― 
 キミは独りではない