「アハハッ! そうかぁ――」
 
 僕の憤慨に視線を躍らせていた彼女の姿は、そこにはなかった。
 
 まるで海を覆う敵群の陰影が霞に見え、絶望する哨戒船の船長の――
 その影が味方の艦隊だった事が分かったときの反応のようだ。

 「…はぁ?」
 僕は悲しみと怒りで、いまだ不機嫌に聞き返す。


 「私とおなじね」 
 僕は今でも時々思い出す。
 彼女の、高校生の彼女が言ってくれた、アイ・ラブ・ユーより優しい言葉。どんな名曲より頼もしい語調。
 「オマエ、高1? 15?」

 
 「あぁ、まぁ」
 僕の中の怒りが鎮火していた。
 何を言ってるんだ?

 
 「おんなじだ」