よくまぁ、こんな不安定軌道を描く彗星みたいな僕達が、衝突や離脱することなく、ランデブー(併進)を続けてきたと思う、大学まで。
 
 いやまぁ、ともかく、今は大学の話ではない。
 
 高校生の僕達の話である。

 ともかく、高校生のそのときの僕は、怒っていたんだ―――

 ――――
 ―――
 ―…

 「マジか? 今までの会話は”俺にポーンを動かさせるための罠”か? 罠だったのか?」
 「いや…まず、今までの台詞は嘘だったのか?」


 「あ、ダメだよ」
 僕が手にしたポーンを置こうとするのを見て、彼女は言った。
 「一度、手にしたチェスマンは変えられな――
 

 しかし僕は、彼女のその台詞を覆い被すように言った。
 
 「そんな事は知ってるし、そんな事はどうでもいい」