「うぜぇ…!」
 僕は頭をクシャクシャと掻いた。
 「マジにめんどくせぇ」

 市松模様の板から視線を上げると、彼女は嘲弄するような目で僕を見ていた。

――試されてる?――
 
 僕は直感的にそう感じた。


 「あぁ、殺すさ。ビショップ殺すさ!」
 勢いよく、ポーンを手に取った。
 勢いよく取ったのだが……
 手にした途端、その「木彫りの丸坊主」が妙に意識に入り込んでくる。
 

 ポーン……。
 彼女いわく、「群を成し、自らは何もしようとしない連中」
 彼女いわく、「彼女の世界を恐怖で支配している者達」
 
 そして彼女は自分をビショップだと言った。
 

 ……って、知るかよ…まったく。
 
 僕に何を求めようと言うんだ。
 僕だって”この世界を上手に生きられていないんだ”。

 それで何故、他人を救える?