「…まぁ、たぶんな」
 僕は彼女にならって、立ち上がった。
  
 いや、「たぶんな」、どころではない。
 悪いが、チェスは結構できる。
 そこいらの女子高生になんか負けない。
 

 だが、そうした自信を見せるのは僕のキャラではない。
 僕は何事にも気だるそうにする事で、この学校という人々の渦に呑まれまいとしているのだ。

 僕はいつもの、COOLで言った。
 「たぶん、できるよ」
 

 「ふぅん。 じゃあ、オマエがロシアで」
 彼女は、バッ、と僕の手からビショップを奪い取った。
 「私が日本だ」


 「はぁ…?」

 妙な事態になった。
 この名前も知らない変なヤツと、チェスやることになった。