「ふぅん…」
 しかし、あんなに一生懸命探していたというのに、彼女の反応はそんなものだった。

 何故だ…?
 自分のではないのか…?
 
 「なんだよそれ。アンタのじゃあないのか?」
 僕は、たぶん酷く目が悪い彼女でも見えるよう、その木彫りの駒を彼女の目の前に差し出した。


 「うん、私のだよ。 で、それでさ…」
 しかし、彼女はそんなものなど意に介さぬ、という風に立ち上がった。
 スカートを、パンパンッ、と払い、僕を見下ろした。僕はフェンスに寄りかかって座ったまま、彼女を見上げた。
 「それで、オマエは出来るわけ?」


 「は?」


 「連合艦隊を率いて、バルチック艦隊を破れるわけ?」


 「はぁ?」

 何を言ってるんだ、コイツは?
 と、僕は一瞬当惑したが、その次には彼女が言わんとすることが分かった。

 あぁ、なるほど。
 つまり、「チェスは出来るか」と訊ねているのだ。