「え……!?」
 僕は言葉を見失った。


 階下では、彼女曰く『ヘタクソなラッパ隊』の演奏が終わった。
 少しの間を置いてその『可愛そうなラッパ隊』は、今度は中島みゆきの『時代』の演奏を始めた。

 その間、僕もその娘も黙っていて、『ラッパ隊』のBGMだけが時間を進めていた。

 
 なに言ってんだよ、コイツ――!?


 一方でBGMはやがて曲調を穏やかにして、あのフレーズのメロディを綴る事となる。
 『こんな時代もあったね、と~♪』
 

 こんな時代もあったね、と……?

 そんな呑気は今の僕には響かなかった。そんなノスタルジアなんて思いつかない。思いつく可能性すらゼロだ。
 

 だって、その娘は造作もなく……
 しかも初めて会った男の前で……
 「“やってた”の?」と言ったのだから。