「さっき、そう言ったよね?」
 その娘は少し怪訝そうに眉を歪めながら、僕の顔を見た。

  不思議だけれど、僕は見つめられたその瞬間、
 「――!」
 一瞬だけど息を詰まらせた。


 それが恋だとかそういうのでは……ないと思う。
 息苦しさに近かった。甘酸っぱい衝撃などとは程遠い。

 彼女は四肢で這いつくばっていて、立っている僕に対しては上目遣いをする形になる。 その『上目遣い』を一言でいうと、“強烈で弱々しい視線”だった。


 少し弁明させてもらいたい。 

 その瞳自体は……
 先に言ったように、特筆すべき容姿的な秀でる点はないんだ。
 彼女の瞳は昨今の流行ではないと思う。つまり丸みがないし、言ってしまえば可愛らしさはない…。

 だから、“一目惚れ”なんかじゃない。 断じて…