「“アイツら”?」
 僕は思わず聞き返した。


 ……いや、違うな。

 その場繋ぎの返答は、むしろその女の子を観察する時間を稼ぐためのモノだった。

 
 「アイツら。 下のヘタクソなラッパ隊」
 その娘はまだ、視線をこちらに向けることすらせず、ただ屋上のコンクリートの上を捜索し続けている。 何を探しているんだろう?
 「アイツら、嫌いなんだ、ワタシ」

 
 僕はその返答を、口に任せた。
 「あ…あぁ、うん、俺もまぁ……」
 『ヘタクソなラッパ隊』などと言われてしまった吹奏楽部の不幸などはどうでも良かった。

 
 何故なんだ…ろう……
 
 理屈はわからない。
 僕はその娘が気になって仕方なかったんだ…。