二人は長い接吻を終えると、気不味そうに見詰め合った。


 いやいや、もうそれで終わりにしてくれ……。

 そんな僕の儚い願いは……
 叶った!

 二人は“それ以上進む”ことなく、乱れた制服を直すと倉庫を後にした。


 あぶねぇ――!

 僕は胸を撫で下ろした。
 
 洒落にならんぜ……。

 僕は、睡魔というヤツがいかに薄情なのか、知らされた。彼は僕の心臓の拍動に驚いて、かくもあっさり僕を見捨てた。
僕の眼前には穏やかな午睡の門とはかけ離れた、ダークグリーンの重い鉄の扉が塞いでいた。
 まるで“迷宮の入り口”だ。眠りとは違う、穏やかで危険な……

 
 僕は逃げるように、その扉に飛びついた。
 当たり前だ。 


――またゲイ行為を見せられたらたまらん
 と、自分のためにハード・ボイルドを吹いてみたが、意味は無かった。
 僕の心は激しく動揺していた。 
 
 動揺――。

 当たり前だ。
 偉ぶっていても、僕は小僧なのだ。
 15歳の童貞の小僧なんだ。