「そこの賊……貴様の目的、さしずめ我の見物であろう?」

「流石、噂に名高い姫君さんやな。何でもお見通しか」

「それを期待してここまで来たのは御主の方であろう?寧ろ、その期待を裏切らなんだ事に感謝するが良い。我と珀火はそこら辺で野垂れ死ぬような人間のように脆くはないからな」

「…そんなら何でここから逃げんのや?姫さんの力なら逃げる事なんて容易いやろ」



こんな大名の端くれに飼われとるなんて解せんなぁ、と言いながら男は襖の隙間から零れ落ちる月を仰いだ。