――パシンッ!!!!――
「っ…、」
「姫様!!」
「月千代さん?いくらなんでも軽口が過ぎますわよ。先を見越す御力があるからとは言え、貴方が生かされている意味はその“力”だけなのですから」
それまで大人しかった桔梗は月千代の頬を思いきり叩くと、皮肉と憎しみが篭った笑みを月千代に返した。
じんわりと、それでいて確実に痛む左頬を押さえながら月千代は桔梗を睨み付けるが、月千代の頭の隅では別の思いが駆け巡っていた。
(……避けれたはず、なのに)
解っていたのに避けられなかった。
殴られる事も、罵られる言葉も解っていたのに。
「少しはその辺りをわきまえて発言なさったらどうかしら?」
(……力だけ、か…)
自分は力だけの存在なのだと、
力をなくせばただの役立たずなのだと、
解っていたのに。
―何故、こんなにも辛いのか―