「……!」

不意に人間の気配を察して、珀火は襖に向かって「何用だ」と問い掛けた。

どうやらやって来たのは侍女らしく、淡々と侍女はその用件を口にした。






「…月千代様、吉次郎様が御呼びで御座います」

「どうせあの下郎の事であろう…解った、今行く」

「姫様。この珀火も共に、」



そう言った後、珀火はくるりと一回転するや否や白銀の尾を揺らす子狐から人間へと変化し、月千代の後を付いて行った。