「蓮ー、朝ご飯は?食べないのー?」


「あー…うん、今日はちょっと早めに
 登校しなきゃいけないんだ。
 わざわざ作ってくれたのにごめん」


「気にしなくていいのよ、気をつけてね」




ありがとう、と笑って玄関まで見送りに
来てくれた母に小さく手を振った。


ガチャリと音をたてて開いたドアの向こうは
俺の今の心境をあざ笑うかの様な晴天。




別に早く学校へ行く理由はない。
ただ、家にいたくなかっただけ。



作ってくれた朝食を食べなかった事よりも
母に嘘をついた事のほうが胸に痛かった。




はあ…と大きくため息を吐きだし、
まだ誰もいない通学路をのろのろと歩き始める。