『巧哉様…』

「はい」

『幸せでございますか?』


目を大きく開き、
少し切なそうに笑われると


「……幸せです」


と姫様の声を思い出すような耳によく響く………
まるで鈴の音のような声で小さく呟かれた。



「姫様を愛している、そう感じるだけで………桜を頭の中で思い描くだけで…心が満たされるのです。こんな気持ち“幸せ”以外の何物でもございません」

『…姫様は』


暖かい風が吹く





もうすぐ春が終わるのを告げるように……
花びらが散ってゆく