驚いて目を開け、その唇を塞ぐ相手の肩を押して距離を取ると………そこには愛しげに私を見詰める巧哉様だった。
『巧哉…様、何故?』
「ただの盗人(ヌスット)でございます」
『盗人?』
「はい、李由姫様を盗みに来ました」
私の頬を撫でる指は昨夜の“大きな男”とは同じ人の指か、と疑う程に綺麗で美しい…
なんて心地良いのだろうか
私の汚れを全て洗い流してくれる錯覚を覚えた………そんな都合の良いことなどないのに。
『巧哉様…私はもう、あなた様の瞳に映る資格さえもないのです。私の為に危険なことはお止めください』
「どうゆうことでございますか? …どうして泣いておられるのです」