『巧哉様…』

私の言葉は聞こえていないのかゆっくり目を閉じ、


『姫様を…よろしくお願い致します』

頭を勢いよく下げると、巧哉様はいつの間に私を見て笑みを浮かべていらっしゃった。

「沙菜さんから大切な人を奪う私にそのような事を言ってもよいのですか?」

『…私は姫様の幸せが何よりの願いでございます』


ふわりと優しく笑うと

「姫様を大事に思う人を見ると…何故こんなに胸が熱くなるんでしょうか」

『巧哉様?』



「では……また」


そう言い残して、
真っ直ぐに……
風を身に纏(マト)いながら去って行かれた。