<side 沙菜>

「…恐ろしいのです」

ただ、そう繰り返す。
巧哉様の震える手が目に入っても、それに手を添えるような役目は私などではなくて…
その手が剣の柄を強く握っても見てみぬフリで

『どうゆうことでしょうか?』

そう聞くことも躊躇ってしまう。


「今すぐにでもこの剣で父が守ってきたものを切り崩して、姫様を…」

『李由姫様を…取り戻すのですか?』

「いえ、李由姫様は私の物ではありません。私の我が儘です…ただ、姫様に私の御側に居て欲しいだけ」


見たこともない強く、鋭い目で

「父上…お許しください」

と巧哉様は空を仰いで呟いた。