「“犠牲”になれとは言わん。私もお前の事を思えば隣国に嫁ぐのがいいと判断したまでだ」
『私の…気持ちはどうでもよいのですか?』
父上は今まで何ひとつ抵抗をせずに従っていた私がそんなことを言い出したことに驚いた様子で
「……慕う人が居るのか?」
と取り乱しながら私の肩を乱暴に掴んだ。
暫くの間、
互いにに目線を逸らさない…
「……巧哉だな」
『…』
「李由、愛娘の初めての恋を祝(シュク)してやれない私は駄目な父親か?」
『いえ』
父上の辛そうな顔を見て…春が訪れたはずの満開の桜を傷むように冷たい冬の風が吹いた、そんな気がした