鶏もまだ鳴き始めてはいない。
そんな中、店が開いている訳がなく人通りもないが姫様は目を輝かせて歩いている…

『あの橋が見えますか?』

――桜の花びらが一面を覆う布のようなり道が桃色になっている河に架かる赤い橋

「あの橋がどうかされました?」

『あれは私の思い出の橋なのです。……私が父に叱られた時や喧嘩に負けていじけた時にあの橋に決まって行きました。そうするといつも決まって母が私の大好きな鼈甲(ベッコウ)飴を持って迎に来てくれるのです』

「お母上との大切な橋なのですね?」