『……嫌でございます』
「え?」
『嫌なのです。巧哉様が誰かをお慕いして…お母上の簪を渡している姿を思い浮かべると胸が苦しいのです』
「姫様?」
『巧哉様…私…』
巧哉様をお慕いしているようなのでございます、という言葉は遮られた。巧哉様の唇によって――
角度を変えて優しく啄むような口付けに、また身体が熱を持つ…ゆっくりと離れてゆく唇を名残惜しく思っていると
「何故そのようなことを言うのですか?」
苦しそうな表情と切ない声
「私などが烏滸(オコ)がましい、想いを募らせても無駄だ…と言い聞かせていたのに……そのようなことを言われては私はもう気持ちを誤魔化すことなど出来なくなってしまいます」
先程の私のようにギュッと私に抱き付く巧哉をとても愛おしく思う……