「李由姫様?」

急に名前を呼ばれ、驚いて目を開ける

「姫様?」

声が聞こえるのは壁の向こう


『巧哉…さ、ま?』

「はい、巧哉です。何となくですが…そこに李由姫様がいるような気がして声を掛けてしまいました」

何とおかしいこと言うのだろうか
壁の向こう側に話し掛けている巧哉様の姿を思い浮かべるとクスクスと笑いが込み上げてくる
『本当に変な御方』


と言うと


「そうですか?」
私と同じように笑う声を聞いて“あぁ…壁が無ければ笑っている顔が見れたのに”残念に思った


『巧哉様、少しお話をしてもよろしいですか?』
沢山のものを見てきたあなた様にとっては私が嘆いている問題など…とても小さいことなんだろう


どうか
何でもない、と言ってほしい。