それからの姫様はいつもはお昼間には城の中で本や花や音楽を嗜(タシナ)んでいらっしゃるのに、一枚壁の向こうに居られる、お父上様に命じられて城の侍達に剣を教えていらっしゃる巧哉様の声を聞くように目を瞑ってただ座って居られるのです。
その後ろ姿はすごく輝き……羽根がはえた鳥のようでございました
「沙菜、私は剣になりたい」
『……李由姫様』
無意識に紡いだ言葉なのでしょうか?
御自分の発言に私でも感じる
“巧哉様の傍にいたい”
という気持ちには気付いておられないのか………
「剣になれば外の世界が見れるのに」と仰るのです。
私は姫様の恋心に気付いていながらも、ただ姫様の初めての恋を微笑ましく見ていました。