込み合うバスの中
ひさぎの手が
私の手に
そっと、触れる。

なぎも常盤さんも
誰も気づいていない

それは、まるで
二人だけの秘密の
ようで、私の胸は
キュンとなった。

ひさぎはボソっと
話す。

「チトセ
 今日は、用事ある?」

「ううん、用は無いけど
 祖母が心配するから
 あんまり遅くまでは
 ・・・・・・」

「じゃあ
 少しだけでいい
 一緒にいよう」

そう言って繋いだ手を
握り締める、ひさぎ。

貴方の顔が
一瞬だけ
小さな男の子に見えた