「うん、帰ったら夕食の
 買い物に付き合うから
 待っててね
 行って来ます」

また、馬鹿な事をして
父を困らせて
母を泣かせる事は
私は何とも思わない。

だけど、祖母だけは
悲しませたくない。

『母親だったのに

 もう母親じゃない』

誰もいないお腹に触れて
涙を流す私に
祖母だけは言ってくれた

「チトセ、大丈夫
 またすぐに赤ちゃんは
 戻って来てくれるから
 大丈夫、大丈夫」

私の手をきつく
握り締める祖母の
ふくよかな温かい手の
感触を、私は忘れない。 

手を振り、私を見送る
祖母に誓う。

貴女が悲しむような事
はしない。

だから、安心して。

いつもの時間に

いつものバスを待つ。

退屈な時間・・・

そんな、私の手に
触れる人がいた。

温かくて優しい手。

「ちょっと来て」

貴方は低い声で
ボソッと話す。