「ひみつ……
 
 わたしね……わたし……
 
 妊娠したことがあるの」

若い女の子が集まる賑やかな店内なのに、この一角だけ静寂が支配する。

「そう」

なぎは呼吸を一切乱すことなく、冷静で居てくれた。

そのおかげで私は、自分の胸の痞えを素直に話すことができた。

「うん、初めて好きになった人の赤ちゃん
 
 先輩もね、産んでもいいよって
 言ってくれて二人で育てようって

 だけど……失敗しちゃって
 
 流産しちゃって

 先輩も赤ちゃんもどっか行っちゃった」

『イヤー、嫌だよ

 わたしの赤ちゃん』

過去の情景を思い出し、放心状態の私。

過去に囚われる時----目に見えない鎖が私の体を雁字搦めに縛る。

苦しい……

なぎは、私の震える手を強く握りしめてくれる。

「うん、うん」

「私ね、16歳だったけど本気で
 お母さんになりたいって思ったんだ」