ある程度話し終えたなぎの瞳は、潤んでいた。

なぎの隣に座ろうと席を立った私は、なぎの後方、その背に寄り添うように重なる男性の背中がある事に気がついた。

だけどそれは、私の場所から見えた錯覚、二人の間には適度な距離がある。

でも、確か店内は女性客ばかりだったはずなのに……

帽子を深く被るあの男性は、いつからあそこに居たのだろう?

一瞬、気に留めただけの男性の後ろ姿----

私は、なぎの隣に腰を掛け、辛い想いを履き出す彼女の背中を優しく摩ってあげる。

「ナギ、大丈夫?」

「本当は私だってこうなること
 は分かってたのよ

 ユウさんはヒトミさんのこと
 をいつだって愛してた

 そうよ……父親の愛欲しさに
 誘惑したのは私

 彼女が言う通り、私がいくら
 今日は大丈夫だって言っても
 絶対に彼は避妊する人だった

 それを、私の体のこと大切に
 想ってくれてるって

 彼の優しさだって思ってた
 けど違ったんだよね」