海辺に立つ家----

部屋の窓から、広がる青い空と海の間に浮かぶ白い雲をじーっと見つめる千歳。


ひさぎに一方的に別れを告げた私は、また以前のように心に頑丈な鍵をかけた。

今度は、隙間なくぴったりと何重にも重ねた心の窓。

この先、二度と扉は開くことはないだろう。

また誰かに恋をして、相手の人を傷つけることのないように。

ひさぎのように……それだけは嫌だもの。


だから、私はもう誰も愛しちゃいけない!

ううん、本当はもう誰も愛せないの、あなたしか……

『俺はお前を愛してる』

貴方のその言葉を胸に、私は一人おばあさんになっても生きて行ける。


バタン----扉の閉まる音に振り返るとそこには祖母の姿があった。

両手で背を摩る祖母の元へと歩み寄った私は、さっと脇を支えた。

「チトセ、ありがとう」

「ううん、それよりおばあちゃん
 ムリして大丈夫なの?

 車椅子……」