「さあ、娘さんが一緒に住むとか
 話していたけど行先までは……
 
 ごめんなさいね、失礼します」

その後しばらくの間は、何か急な理由で引っ越しを余儀なくされて連絡が途絶えているものだと思っていたが、時間を置いて少し考えれば自ずと全貌が見えて来た。

何度かけても繋がらない電話に、戻って来るエラーメール。

そう、千歳は故意に俺の前から消えた。


俺の元を去った理由、連絡を取りたくない程に嫌われる理由が俺にはある。

千歳は俺の愛を疎ましく思い、浮気したことを許してはくれないのだろう。

俺の想いが重荷となって……彼女は消えた。


あれから一年が経つというのに、俺はまだ千歳

おまえのことを忘れられない。

『私の愛は、あなただけのものだよ』

忘れなきゃいけない。

『おまえの傷、見せてよ?』

貴女の傷痕……俺は何も知らない。

本当のこと何ひとつ知らずに、このまま忘れていいの?


千歳、お前の声、聞きたい。