「ああ、それなら心配要らないよ
 最近のヒサギは女っ気ないからね」

「マジィ~
 
 あんなにイケてるのに勿体ねぇ
 話だな」

ひさぎはヘルメットを被りバイクに跨るとエンジン音を響かせて、その背は遠ざかる。


前方に広がる空----あの日も、こんな風に晴れ渡っていたっけ。


ピンポーンピンポーン、ドンドンドン、ドンドンドン!

「チトセ、俺だよ、ひさぎだ

 居ないのか?

 チトセ!

 あの~すみません、誰か
 
 誰かいらっしゃいませんか?

 チトセのおばあさん……」

「あのぅ

 北村さんでしたら
 引っ越しされましたよ
 
 先日の日曜日に……」

「えっ、引っ越し!?

 あの、どこに引っ越されたか
 行先分かりませんか?」