「チトセ、おいで」

ひさぎの肘まで泥んこの、その手に
私は触れる。

二人、波打ち際ではしゃぐ。

「どうせ、濡れてるんだし・・・」

それを合言葉に、私達はまた水に濡れる。

嫌なこと、辛いこと

その全てを忘れるように私達は大きな声を
出して、お腹の底から笑って、はしゃいで
そして抱きしめ合ってキラキラと輝く水面
を見てた。

口づけを交わす二人・・・

時が止まればいいと、本気で思った。

ひさぎが、カバンから出してくれたひとつ
の大きなタオルを使って、私達はお互いの
髪を拭き合う。

「ひさぎのカバンって
 例のポケットみたいだね
 
 何でも出てくるね」

「例のポケット?

 ああ、アイツ・・・」

「みんなのアイドルを
 
 アイツ呼ばわりですか?」