『いいよ』

チトセ・・・何がいいの?

何もよくないくせに、私はそう言う。

ひさぎを失いたくなくて、私は自分の心
に深く刻み込まれた傷を見ない。

見ようとしない傷跡から溢れ出る血は
いつか私を破壊する。

私は、壊れる・・・

「ひさぎ

 もう、忘れよう」

「リホとは、ちゃんと話すから・・・」

「いいよ、話さなくていい

 彼女には二度と会わないで」

私の声は、強くなる。

「さっきの荷物、預けてあるんだ
  
 だから、会わないわけにはいかない」

「イヤだよ、イヤッ」

私は、悲しい瞳で貴方だけを見つめる。

彼女には会わないでほしい。